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ユニクロ柳井氏が円安を真っ向から否定する理由

 今日は経済の話。

 先日、ファーストリテイリングの決算発表が行われた。そこでの記者会見で、柳井会長兼社長は足元の経済についての意見を記者から質問されました。

ファーストリテイリング 柳井会長兼社長

 答えた内容については大きく、①円安について、②政府の構造改革についてです。

 まず、円安について。

 柳井会長は、記者会見ではっきりと、「円安でメリットを感じている人はいるのか。製造業でもほとんどいないと思う。むしろデメリットだ。円安でメリットを感じている人の声が聞こえてこない」と真っ向から円安を否定しました。

 ファーストリテイリングは、ジーユーなどのブランドも展開していますが、わかりやすいようにほとんどの売上を占めるユニクロブランドの事業だけで比較すると、国内と海外の売上比率が4:6となっており、海外売上のほうが多くなっています。

 つまり、ユニクロは円安のほうが儲かるのです。実際に、今回の決算発表では過去最高の利益となったことを報告していますが、2733億の利益のうち、1100億円が円安による利益増加ということですので、利益の半分近くは為替による影響となっています。

 さて、こうしてグローバル企業として円安の恩恵にあずかるユニクロですが、そのトップが円安を真っ向から否定するということは、日本経済全体を危惧しての発言ということです。

 実際、ユニクロは日本での事業について、秋冬物の商品を値上げすることを発表しており、柳井会長も、「円安なので値上げしないのは無理です」と切実な思いを口にしています。円安による原材料の輸入価格が上昇しているのが要因です。

 グローバル企業が儲かると日本経済全体が上向きそうな気がしますが、昨今のコロナ情勢を受けて、大企業は儲かったとしてもおそらく内部留保に回すでしょうから、社員の給料にダイレクトに業績が反映されることは考えにくいです。むしろ、輸入物価の値上がりによって、家計が圧迫されるマイナスインパクトのほうが日本経済に影響しそうだというのが柳井会長の考えではないでしょうか。

 実際足元の円安は148円を突破し、もはや150円に到達しそうな勢いとなっており、ここまで急速に円安が進むと、安定した経済活動を送ることがどんな企業でも難しい局面だと思います。

 

 つづいて、政府の構造改革について、柳井会長は、「本当にひどい。構造的に転換しないとだめでしょう。小手先のお金を配ることだけ。こんなことでいいんですか。日本経済だけじゃなく、社会全体が悪い方向に行って、取り返しがつかないことが起きるんじゃないか。民間企業や個人ががんばっていかないといけない時代になっている」と発言しています。

 これはもっともな意見で、先ほどの円安の話に戻りますが、大企業が儲かっても一般家庭はその恩恵を受けることがほぼありません。そのため、大企業が納めた税金を使って、低所得世帯に給付金を配るというのが政府が行っている政策の一つです。円安による格差是正を埋めようとしているんですね。今回であれば、岸田総理は、住民税の非課税世帯、つまり年収が極端に低い世帯(アルバイトやパートの収入のみで生計を立てているような世帯)に対して給付金を支給しています。

 こうした政策は、わかりやすいので、支持率を回復させるには手っ取り早い政策にはなるのですが、給付金が貯蓄に回る可能性が大きいので、経済全体の好循環には貢献しません。

 こうしたことを加味して、柳井会長は、長い目でみた日本経済の成長には抜本的な規制緩和等、構造改革を行って日本経済が好循環を生み出す社会構造を政府が作らなければならないと訴えたいのだと思います。そういう意味では、経済面を含めて就任から大した成果を出していない岸田総理にある種のいらだちを覚えているのではないかとも考える語気の強い記者会見でした。

 これ以上過度な円安が進まないように祈るばかりですね。